今から約30年前、友人からとあるゲームを渡されました。私は自分がゲーマーだと自負していたのでどんなジャンルだろうがクリアしてやると取り掛かりました。そのゲームの名前はスーパーファミコン「スーパー競馬」、競馬なんて全然分からない私は四苦八苦しながらプレイし続けました。今思うに酷い出来でした。クソゲーと言ってもいいかもしれません。
その後、友人はもっとちゃんとした競馬を扱ったゲームがあることを教えてくれました。それが私を競馬の世界へどっぷりと嵌まってしまったきっかけとなったゲーム、スーパーファミコン「ダービースタリオンⅡ」です。
寝てる以外はずっとプレイし続けるぐらい嵌まり込んでしまいました。Ⅲの発売日のおもちゃ屋開店時間までⅡをプレイしていたぐらいです。
そして、実際の競馬にもどっぷりと嵌まってしまったんです。
お陰で毎週レースをテレビでチェックし毎月優駿を読み競馬四季報を購入しほぼすべての血統を覚え馬なり1ハロン劇場を楽しみにする生粋の競馬オタクが誕生しました。綺麗になる前の浅草の場外馬券場にも行ってたっけなぁ。
そんなに没頭してたのに、気が付いたら全く競馬を見なくなっておりました、というか興味を失ってしまっておりました。さらに言えば、興味を失ってしまっていたことさえ忘れておりました。何故あそこまで嵌まり込んでいた競馬を頭の片隅にも置かないようにしてしまっていたのか?その原因を、たまたま見てしまった動画で思い出してしまいました。
社台ファームが独占禁止法に触れるぐらい一大勢力として存在し、サンデーサイレンス産駒が活躍しまくり、武豊が勝ちまくってたあの頃。マル外や持ち込みが活躍し、海外遠征も活発になり、これから競馬はもっともっと面白くなる!と思ってたんだよな俺。
そんな時にとんでもない馬が現れたんですよ。ツインターボばりに大逃げをかまし、そして勝ってしまうとんでもない馬が。どうせローカル限定だろうまぐれだろ次は負けるだろう騎手も武じゃなくて南井だしと思ってたら宝塚記念も勝ち、毎日王冠も逃げ切る。こりゃ本物だと実感したっけなぁ。
そして天皇賞秋。
いつも以上の大逃げ、1000m通過タイムもとんでもない数字を叩き出し、それでいて楽な感じで駆けていく彼を見て、レース中盤にもかかわらず大歓声と言うよりもどよめきが起こってる状況で、私は夢を見てしまったんです。凱旋門賞で大逃げを打って大差で勝利する彼の姿を。
しかし、私の中でその後の記憶がありません、全然思い出せないんですよ、彼が故障して安楽死処分になったことを知ってるのに、映像として覚えてないんですよ。
そんな私がアプリで人気になってるウマ娘の存在を知りました。なんとなく検索してたらYoutubeにウマ娘としての彼のまとめ動画があったんです。それでね、何となく見たんです、見てしまったんです。
故障シーンを見ても脳から記憶を引き出すことが出来ませんでした。武は落馬してなかったのか、とか思ったんだもの。あまりにもショックで俺の記憶から完全に消去してたようです。
そして分かったんです。これがきっかけで私は競馬の世界から離れたんだって。あまりに辛くて悔しくて理不尽で残酷な競馬の世界に嫌気が差してしまったんだって。
だから、翌年の宝塚記念の杉本さんの「私の夢」を知りませんでした、というかこの動画で知ってさらに号泣しました。あの時ちゃんと泣けなかったからでしょうか。感情を押し殺していたからでしょうか。長年記憶を封印していたからでしょうか。自分でびっくりするぐらい泣いてしまいました。
これも何かの縁かと思い、アニメ『ウマ娘 プリティーダービー』を見始めました。
これは異世界から受け継いだ輝かしい名前と競走能力を持つ“ウマ娘”が遠い昔から人類と共存してきた世界の物語。
田舎から都会のトレセン学園に転校してきたウマ娘・スペシャルウィークは、チームメイトたちと切磋琢磨しながら「日本一のウマ娘」の称号をかけて<トゥインクル・シリーズ>での勝利をめざす!
エルコンドルパサーが日本ダービーに出たり私が分からない馬が出てきたりそれなのにとんでもなく古い馬が居たりと、納得できなかったりカオスすぎたりで不満な点が多々ありましたが、それでも、それでもサイレンススズカが生きていて、あの後復活して、海外遠征してるって物語を、嘘だろうとアニメだろうと人間の女の子になっちゃっていようとも、私は見ることが出来て幸せな気持ちになりました。
この「スピードの向こう側へ。」って文章の意味が幸せな意味として捉えられる物語だってあっていい、そう思います。
そして、あの天皇賞秋の後もいろいろとドラマがあったんだなぁ、と知ることが出来ました。エルコンドルパサーが2着で負けた時の凱旋門賞馬がジャパンカップに来てたなんてなぁ、凄いドラマやん。知らなったわ。
ところどころ腑に落ちない点が多々ありましたが、競馬好きならにやりとするような小ネタがふんだんに織り込まれており、競馬が好きなスタッフが携わってるなぁと感じることが出来ました。競馬を知らない人にも楽しめる作品なのか疑問でしたが、調べるとこれがきっかけで競馬に興味を持った方がたくさんいらっしゃるようですね。
私もこのアニメをきっかけに競馬の世界にもう一度触れてみようかと思いました。