鹿沼の隅っちょから

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家庭教師は知っている 青柳碧人

私の大好きな作家の一人である青柳碧人の作品を全部読んでやる!と貪っております。今のところハズレが1作品しかないのは流石としか言いようがありません。そしてこの作品はその中でもさらに一つ上の素晴らしいものでした。

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原田は、首都圏で《家庭教師のシーザー》を運営する会社で働いている。大学生のアルバイト講師たちの指導と相談を受け、派遣先の家庭で虐待など深刻な問題がありそうなら自ら家庭訪問を行う。スタッフたちから奇妙な相談が持ち込まれるたび、原田の家に入り浸っている女子高生・リサは「それぞれの家の事情だから放っておけばいい」と言うが……。驚愕のラストが待ち受ける家庭訪問ミステリー。

家庭教師は知っている (集英社文庫)

家庭教師は知っている (集英社文庫)

  • 作者:青柳 碧人
  • 発売日: 2019/03/20
  • メディア: 文庫
 

「家庭教師派遣会社の社員が契約している家庭の虐待を暴いていく」ってコンセプトを思いつくのがもう凄い。そしてそれをちゃんと料理できるのも凄い。さらにはちゃんと物語として進行させていくのも凄い。私はこの独特で独創的なコンセプトの上にミステリーを展開するのが青柳さんの真骨頂だと思っております。中にはそのコンセプトが今一つな作品もありましたが、この「家庭教師は知っている」は間違いなく一つ抜けてます。

 

まずミステリーとして面白い。基本的に短編なのでテンポが良いのがまた良いですね。謎を提示された後の解決が無駄に引っ張ることなく展開が早いのは、あまり本を読む時間を確保できない私には非常に有難かったりします。あまり長いとそれまでの展開を忘れてたりするのよね。

そしてテーマが興味深い。児童虐待は本当に心が苦しくなります。どうにかして被害者の子供を助けたいけど、単純な話では無いと知ってしまったんです。昔、駐車場で小さい子に暴力を振るっていた母親を見ました。子供は泣きじゃくって逃げるのですが、逃げる先が結局暴力を振るう母親なんですよ、母親の足にしがみついて泣いてるんですよ。母親が叩いていたその手で子供の頭を撫でるんですよ。あれを見たときに何とも言えない胸糞悪さが込み上げてきました。なんでしょうね、この無力感。私たちはどう行動すればいいのでしょうか。通報したところで解決するのでしょうか。いまだに私はわかりません。とりあえず通報するけど。

家庭教師という職業にも興味が湧きました。他人の家に行って子供に勉強を教えるってよく考えたら特殊な状況ですよね、今更ですがやってみたかったなぁ、って俺の学力じゃ無理だけどな。

 

登場人物を総入れ替えでもいいので、このコンセプトで新しい物語を書いてくれませんかね。私は非常に楽しめた作品でした。