私の大好きな作家である青柳碧人さんの作品。シリーズとして現時点で3冊も世に出てるところから評判良かったのだろうと期待値が高まっておりました。得てしてそういう場合って勝手に自分でハードルを上げて悲しい気持ちになったりするものですが、この作品はそんな私のハードルを軽く超えていった大変面白い作品でした。
謎と事件好きの猫河原家。今夜も家族全員、殺人事件をめぐって、夕食前に迷推理を披露する。これも「推理せざる者、食うべからず」の家訓ゆえ。難事件に嬉々とする両親兄姉たち。普通の女子大生でいたい私はいつもブルー。正直、推理なんかしたくない。のに、遭遇した事件にピンときた瞬間、髪の毛は逆立ち、「名探偵」降臨。真相を見事突き止める――え? 一番の推理好きは、私?
一家全員名探偵ってコンセプトに対して、話がぐちゃぐちゃになったりキャラが弱くて出てこなくなる奴が出てきたりただ単に引っ掻き回すだけの馬鹿キャラが出てきたりと、どことなく不安な要素な気がして読み始めました。杞憂でした。一人一人ちゃんと役割があるし、キャラも立ってるし、引っ掻き回す役が固定と言うより主人公以外全員だし、ある程度のテンプレに沿って事件を解決していく物語構成は良く出来てると思いました。
何よりミステリーとして面白い。ちゃんとミステリーしてるんです。当たり前っちゃ当たり前なのですが、私はミステリーが好きなんだって改めて思うぐらい、真っ当な作品でした。
ちなみに私が一番この作品を気に入った部分は、ネガティブ占い師の扱いだったりします。最初はネガティブなことしか言わない占い師なんて意味が無いと言うか無駄と言うか弊害しかないと思ったし実際作中でもそんな扱いなのですが、後半になると印象がガラリと変わるんですよ。あ、こういう方法もまた人を救うことになりえるんだなって、ネガティブ占いも悪くないんだなって。
最初は悪者的なイメージを持ってるが故にミスリードになり、それを利用して物語の構造を作ってるんですよ。完全に騙されましたよ私。
読み終わった後、やはり私は青柳さんの作品が好きであることを改めて強く実感しました。まだ読んでないシリーズ次巻が楽しみだわぁ。