鹿沼の隅っちょから

鹿沼の隅っちょから

「鹿沼」でググった時に1ページ目に表示される事を目指していたのに鹿沼の事全然書いてません

本と鍵の季節 米澤穂信

私が今「一番好きな作家は誰?」と聞かれてたら「米澤穂信」と答えます。ミステリーとして勿論のこと抜群に面白いのですが、どんな作品でも登場人物にまともな奴が居なかったり無駄に黒かったり地味に残酷だったり、読み進めていくうちに「ああ、間違いない、これは米澤穂信だ」と安心できるんですよね。

そしてこの『本と鍵の季節』ですが、まごうことなく米澤穂信でした。ああ、この胸糞悪さ、間違いない、私の待ち望んでいた米澤穂信だ。

www.shueisha.co.jp

堀川次郎、高校二年で図書委員。不人気な図書室で同じ委員会の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、本には縁がなさそうだったが、話してみると快活でよく笑い、ほどよく皮肉屋のいいやつだ。彼と付き合うようになってから、なぜかおかしなことに関わることが増えた。開かずの金庫、テスト問題の窃盗、亡くなった先輩が読んだ最後の本──青春図書室ミステリー開幕!!

普通の高校生の日常に起こる謎を解いていくほんわかミステリー、かと思って読み始めた人はいないとは思いますが、もしいらっしゃるのでしたら羨ましい、私もその感覚で米澤穂信の作品を読んでみたいわ。そして暗い気持ちになりたいわ。

いや、分かっていても暗い気持ちになれるんですけどね。

そのダークな部分がピックアップされがちですが、やはり肝となるミステリー部分は毎回毎回驚かされます。ここまで連続でクオリティの高いものを提供できる作家さんっている?ほぼすべての作品を読んでおりますが、ハズレが一冊も、短編集のひとつでさえもないのよ。しかもそのレベルが圧倒的に高い。

伏線をごまかす為に無駄な描写を入れ込まざるを得ないミステリー作品が多い中、ここまでその部分を削ぎ落して提示してくる『本と鍵の季節』は、米澤穂信作品の中で一番の出来だと私は思っております。やはり彼は短編で切れ味を見せつけるスタイルが似合ってる。