鹿沼の隅っちょから

鹿沼の隅っちょから

「鹿沼」でググった時に1ページ目に表示される事を目指していたのに鹿沼の事全然書いてません

老いと記憶 増本康平

ここ何年か自分の記憶力に自信が無くなってしまう様な事例が多々発生しております。年齢的にはまだ50歳手前なので認知症では無いと思っているのですが、どうにもこうにも覚えが悪く、思い出せない、言葉が出ない、今見たものが覚えられない等々、何か私の脳が壊れてしまったのではないか?と恐怖を感じるほどの状況になっております。そんな時に何となく見つけたこの一冊、読んでみたら違う方向から気持ちが楽になりました。読んで良かったわ。

www.chuko.co.jp

加齢によって、記憶は衰える――。

それが一般的なイメージだろう。だが、人間のメカニズムはもっと複雑だ。本書は、高齢者心理学の立場から、若年者と高齢者の記憶の違いや、認知能力の変化など、老化の実態を解説。気分や運動、コミュニケーションなどが記憶に与える影響にも触れ、人間の生涯で記憶が持つ意味をも問う。

加齢をネガティブに捉えず、老いを前向きに受け入れるヒントも見えてくる。

目次の前に書いてある「はじめに」の項目を読んだ段階でもう心が軽くなったぐらい、今の私が読むべき本に出会えた!と感動しました。冒頭に書いてある

神よ、

変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。

変えることのできないものについては。それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。

そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、

識別する知恵を与えたまえ。

この言葉だけでも心が抉られたもの。凄くない?アメリカの神学者ニーバーの言葉とのことですが、いやぁ凄い。俺キリスト教舐めてたわ。

そして「人の名前が覚えられない」ことと「火の元の消し忘れが心配」であることは対処の仕方が異なるとかも衝撃でした。よくよく考えると全く違う事象なんですよね。

そもそも、老いと記憶の関係を脳機能からでは無く心理学からアプローチしてるだけでも価値がある、と私は思いました。

 

私がこの本を読んで一番安心したのは、認知症を確実に防ぐ方法は今のところないことと、高齢期における生き方の指針を見出せたことです。

認知症を防ぐ方法があるならば時間とお金を掛けてでも実行せざるを得ませんが、無いと分かれば逆に気持ちが楽になりました。

年老いたときにどうやって生きていくのかが全く見えてなかったのですが、この本である程度想像することが出来ました。

私は今年で49歳になります。人生折り返しどころかとうの昔にファイナルカウントダウンが始まっております。日本人男性の平均寿命は81歳です。普通に生きていても、私はあと30年で終わります。70歳から高齢期だとするならば、思い通りに活動できる年数はあと20年しかありません。たった20年。私に残された時間はたった20年です。

両親も健在ですし子供もまだ学生ですし背負ってるものは決して軽くはありません。でも、私もあと20年で活動限界を迎えるのならば、もっと自分のために生きてもいいっすよね?そう考えたら心が本当に驚くほど軽くなったんですよ。

 

仕事でもプライベートでも責任感が邪魔をします。しかし、私はこの本に出会えて、もうテキトーに生きていこう、そう思うことが出来るようになりました。もしかすると作者の趣旨と若干ズレてるかもしれませんが、私の心を軽くしてくれた素晴らしい本でした。ありがとうございまいた増本先生。

アニメ『虫かぶり姫』は一見恋愛モノだけど実は俺ツエーフォーマットを使用した無双系作品

私は少女漫画および少女向けライトノベルをリスペクトしております。少年漫画および少年向けライトノベルよりも物語性が高くそして緻密、すべてにおいてレベルが高い、そう思っております。そしてそのアニメ化となると、得てして面白い作品が生まれる確率が高くなるのですが、この「虫かぶり姫」も思った通り素晴らしい作品でした。

https://cs1.animestore.docomo.ne.jp/anime_kv/img/25/78/8/25788_1_1.png?1665711008039

mushikaburihime.com

侯爵令嬢のエリアーナは幼い頃から本に夢中で、ついたあだ名が「本の虫」ならぬ「虫かぶり姫」。そんな変わり者の姫に、王太子であるクリストファーはこう告げる。

「私と婚約してほしいんだ」

婚約によってクリストファーは宮廷内の派閥争いから解放され、エリアーナは王太子の婚約者として王宮書庫室への出入りを許される。これは、お互いの利点のための“名ばかりの婚約”……のはずだった。

4年の歳月が流れたある日、エリアーナはクリストファーが子爵令嬢アイリーンと仲睦まじく語らう姿を目撃してしまう。ついに婚約解消の時が来たことを覚悟するエリアーナ。だが、その心には複雑な想いが交錯していた……。
本好き令嬢の勘違いラブファンタジーエリアーナとクリストファーの“本当の恋”の行方は――!?

youtu.be

フォーマットは俺ツエーなんです。そこにどのようなエッセンスを振り掛けるかで物語の味付けが変わります。少女向けは王子に惚れられるのが殆どですね。んで何故惚れられたのかの理由付けがその作品の特徴になりえるのですが、得てして多いのが所謂「おもしれー女」です。貴族らしからぬ振舞いとか媚びないとかですね。この作品ではそれが「本好き」になります。

しかし、この作品はこの「本好き」を惚れられた原因だけに止めません。その知識が政治や外交等々に波及していくところが更なる俺ツエーに繋がり、様々な問題を無双していきます。しかもこの主人公、無自覚なんですよね。ここらへんも最近のなろう系の流行に乗ってるかもしれません。

恋愛要素だけでは様々な物語を消費してきたオッサンを面白いと感じさせるのは難しいでしょうが、逆に他のファクターが付け加えられると「独自性が素晴らしい」と簡単に落ちます。その典型的な作品ではないでしょうか。

へそ曲がりの天邪鬼なおっさんである私をコロっと落とした「虫被り姫」、興味が湧きましたら是非視聴してみて下さい。オススメです。私が単純にチョロい可能性もあるんですけどね。

薬屋のひとりごと11 日向夏

伏線、そして回収。

それが鮮やかに決められた時、私は言いようの無い興奮を覚えます。そしてその伏線をいつ思いついたのか、途中で当てはめたのか、最初からそのつもりだったのか。そういうことを妄想しながらニヤニヤしてしまいます。そして、まさかそのニヤニヤがこのシリーズでも味わうことが出来るなんて思いもしませんでした。ありがとう日向夏

herobunko.com

戌西州を襲った大蝗害。
過去の蝗害を知る者は少なく、人々は混乱する。西都や国境近くでも、食糧の強奪や暴動が頻繁に起きていた。猫猫は何もできない自分を歯がゆく思いつつも、できる限りのことをやっていた。
それは中央からの客人である壬氏も同様で、身の安全のためという名目の軟禁生活を強いられながらも、蝗害を予見していたことで、中央からの支援物資を早く受け取ることができた。だが、その手柄は壬氏ではなく西都の領主代行・玉鶯のものとして扱われてしまう。手柄の横取りに猫猫は腹を立てるが、当の壬氏はどこ吹く風で、皇弟という立場を最大限に利用して戌西州への支援要請を行う。
また、物資が不足する中、猫猫にさまざまな問題が火の粉となって降りかかる。謎の腹痛に苦しむ玉鶯の孫娘。変人軍師・羅漢が連れてきた棋聖と呼ばれる老人。同僚の医官・天祐の奇行。そして、消息不明だったあの人が帰ってくる⁉
一方、西都では皇弟に対する不満が高まっていく。蝗害による飢えや病に苦しむ民衆は、とうとう皇族である壬氏へ怒りの矛先を向けることに。守り支えていたはずの民衆に恨まれてしまった壬氏の決断は?不審な動きを続ける領主代行・玉鶯の狙いとは?そして、猫猫は無事、危機を脱することができるのか?

公式HPに「面白さ絶対保証。怒涛のクライマックスに刮目せよ!」なんて書かれてまして「おいおいそりゃ盛り過ぎだろというか公式がこういう単語を使用していいのかい?」なんて不安で不審で不信な気持ちになったのですが、読み終わった今「書きたくなる気持ちも分かるわぁ」となっております。

なんだこの鮮やかでとんでもない規模の伏線回収は!!

このシリーズを読み続けていたのはこの11巻を読むためだったのかもしれません。そのぐらいの衝撃でした。そしてさらに言えば、この先もこのレベルの衝撃が続いていきそうな予感さえ漂ってることにも驚いております。このシリーズってこんなに凄い代物だったっけ?出来のあまり良くないミステリー風ライトノベルだけど読んでいて疲れない程度だと思っていたのですが、私の中でこの11巻で完全に評価が覆りました。

これは凄い。

この展開を最初から考えていたのか、それとも序盤からなのか、ここ最近思いついたのか。どれにしてもやはり凄い、凄いとしか言いようがない、褒めたいのに私に適切な言語化できる能力が無い。

兎にも角にも、私は日向夏なる作家さんにごめんなさいしなければならないのは間違いありません。今まで申し訳ございませんでした。今、私の中であなた様は最高な作家の一人となりました。

ああ、次巻をすぐに読みたいわ。