ここ何年か自分の記憶力に自信が無くなってしまう様な事例が多々発生しております。年齢的にはまだ50歳手前なので認知症では無いと思っているのですが、どうにもこうにも覚えが悪く、思い出せない、言葉が出ない、今見たものが覚えられない等々、何か私の脳が壊れてしまったのではないか?と恐怖を感じるほどの状況になっております。そんな時に何となく見つけたこの一冊、読んでみたら違う方向から気持ちが楽になりました。読んで良かったわ。
加齢によって、記憶は衰える――。
それが一般的なイメージだろう。だが、人間のメカニズムはもっと複雑だ。本書は、高齢者心理学の立場から、若年者と高齢者の記憶の違いや、認知能力の変化など、老化の実態を解説。気分や運動、コミュニケーションなどが記憶に与える影響にも触れ、人間の生涯で記憶が持つ意味をも問う。
加齢をネガティブに捉えず、老いを前向きに受け入れるヒントも見えてくる。
目次の前に書いてある「はじめに」の項目を読んだ段階でもう心が軽くなったぐらい、今の私が読むべき本に出会えた!と感動しました。冒頭に書いてある
神よ、
変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては。それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。
この言葉だけでも心が抉られたもの。凄くない?アメリカの神学者ニーバーの言葉とのことですが、いやぁ凄い。俺キリスト教舐めてたわ。
そして「人の名前が覚えられない」ことと「火の元の消し忘れが心配」であることは対処の仕方が異なるとかも衝撃でした。よくよく考えると全く違う事象なんですよね。
そもそも、老いと記憶の関係を脳機能からでは無く心理学からアプローチしてるだけでも価値がある、と私は思いました。
私がこの本を読んで一番安心したのは、認知症を確実に防ぐ方法は今のところないことと、高齢期における生き方の指針を見出せたことです。
認知症を防ぐ方法があるならば時間とお金を掛けてでも実行せざるを得ませんが、無いと分かれば逆に気持ちが楽になりました。
年老いたときにどうやって生きていくのかが全く見えてなかったのですが、この本である程度想像することが出来ました。
私は今年で49歳になります。人生折り返しどころかとうの昔にファイナルカウントダウンが始まっております。日本人男性の平均寿命は81歳です。普通に生きていても、私はあと30年で終わります。70歳から高齢期だとするならば、思い通りに活動できる年数はあと20年しかありません。たった20年。私に残された時間はたった20年です。
両親も健在ですし子供もまだ学生ですし背負ってるものは決して軽くはありません。でも、私もあと20年で活動限界を迎えるのならば、もっと自分のために生きてもいいっすよね?そう考えたら心が本当に驚くほど軽くなったんですよ。
仕事でもプライベートでも責任感が邪魔をします。しかし、私はこの本に出会えて、もうテキトーに生きていこう、そう思うことが出来るようになりました。もしかすると作者の趣旨と若干ズレてるかもしれませんが、私の心を軽くしてくれた素晴らしい本でした。ありがとうございまいた増本先生。