鹿沼の隅っちょから

鹿沼の隅っちょから

「鹿沼」でググった時に1ページ目に表示される事を目指していたのに鹿沼の事全然書いてません

黒王妃 佐藤賢一

私の大好きな佐藤賢一の一番得意なフランス史作品。世界史が好きな私ですが黒王妃でもカトリーヌ・ドゥ・メディシスでも誰なのかどころかどの時代の人なのかさえ分かりませんでした。普通ならばこの時点で興味が無くなるでしょうが、そこは佐藤賢一、絶対に楽しめるだろうとワクワクしながら読み進めましたが想像以上の面白さでした。

さすが佐藤賢一。ネタバレの少ない歴史小説は本当に面白い。

www.shueisha.co.jp

彼女は死ぬまで黒衣を愛した──。
現代に続くファッションの礎を築いた王妃カトリーヌ・ドゥ・メディシス(1519-1589)

ルネサンス期、フィレンツェで生まれたカトリーヌ・ドゥ・メディシス。政略結婚でフランス王家に入り、やがて王妃となるも、夫アンリ二世の心は愛妾ディアーヌにあり、宮廷では平民の出と蔑まれる。だが、カトリーヌは料理や服、化粧品などに卓越したセンスを発揮し、宮廷での地位を上げていく。そして、遂に権力の頂点に君臨するが……。現代に続くファッションの礎を築いた王妃の素顔に迫る長編。

日本史を題材にした作品はどうしても展開や結末が分かってしまっているので、読者はそれを分かった上で楽しまざるを得ません。また作者も読者が知ってる前提で書いてます。しかし、世界史になれば話は別です。カエサルやナポレオンのような超有名人ですら、大まかな展開や結末は分かるけど詳しく知ってる人は少ないでしょう。ましてやフランスの王妃なんて何一つ知らない人が殆どではないでしょうか。

私の中で佐藤賢一は「ネタバレの少ない歴史小説」なるジャンルを作り上げた作家さんだと位置付けております。このジャンル、私には堪らなくワクワク出来るんです。ざっくり言うと展開も結末も知らない状態で豊臣秀吉の物語を読んでいく感じです。普通に考えたら秀吉の人生ってすんげぇエンターテイメントですよね。でもそれが創作物だとしたらありえない展開の連続で興ざめします。あのマンガのような展開は「実際の歴史だから」受け入れらるんです。そして、そんな人生を送った歴史上の人物は世界にごまんとおります。それらを物語として読めたら絶対に面白いに決まってるじゃないですか。

 

この「黒王妃」、展開がマンガのように進みますが実際の歴史に沿って展開しているので受け入れられますし、世界史をある程度齧っていれば「ああ、これはこの人の時代だったのか」と伏線回収的な楽しみも出来ます。個人的にはノストラダムスがここに出てくるのか!あの予言はこれだったのか!と約40年経って回収された伏線のような体験が出来ました。

切り取ったら絶対に面白い歴史上の人物をエンターテイメントとして変換したら楽しいに決まってます。世界史版の司馬遼太郎だと言えば伝わりますかね。興味を持たれた方は是非佐藤賢一の作品に触れてみて下さい。

ただなぁ、佐藤賢一の書き方って癖が強いのよね。合わない人は多いだろうな。