鹿沼の隅っちょから

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「鹿沼」でググった時に1ページ目に表示される事を目指していたのに鹿沼の事全然書いてません

上手な犬の壊しかた 玩具都市弁護士 青柳碧人

私の大好きな作家である青柳碧人さんの作品。まさか玩具都市弁護士の続編が出てるとは思いも寄りませんでした。

しかし何故表紙の絵の雰囲気を全く違うテイストにしたのでしょうか?

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bookclub.kodansha.co.jp

人と玩具が共存する犯罪都市で相次ぐ難事件! ハードボイルド・トイストーリー、待望のシリーズ最新刊!知能と感情を持つ玩具が生み出され四十年。人に捨てられ荒んだ玩具と、落ちぶれた人間が集まる街は「悪魔のおもちゃ箱」と呼ばれるようになっていた。街に住む元弁護士のパン屋・ベイカーの前に現れる、奇妙な玩具たちが起こす難事件! ベイカーは玩具たちの弁護を引き受けるのだが……!?

前作の表紙これですよ?↓

toriid.hatenablog.com

なんでアニメ調からこんなリアル調に方向転換したのでしょうか。テコ入れだったのでしょうか。仮にそうだとしても失敗したようですね、だってこの後シリーズ化することなくこの2巻目で打ち切られてしまいましたから。いや、2018年の作品だからまだ可能性は無い訳じゃないかも?

 

とにもかくにも、編集がこの作品の売り方に試行錯誤してることは理解しました。実際に作品の雰囲気に合ってるのはリアル調の方なんですよね。1作目の表紙は全く世界観に合ってませんから。玩具ってタイトルに引っ張られ過ぎてあんな表紙になってしまったのでしょうね。編集はちゃんと中身を読んでなかったのか?と疑ってしまいます。

公式ホームページのあらすじにもありますがこの作品「ハードボイルド・トイストーリー」なんですよ。玩具は玩具だけど進化したAIを搭載した捨てられた玩具なんです。それらが活動してる街で起こる事件を人間である主人公が解決していく物語なんです。そこには玩具の持つ楽しさとか明るさは無いんです。悲哀しかないんです。

だからタイトルも、普通ならサブタイトルにすべき「上手な犬の壊しかた」を前に持ってきたのでしょう。インパクトのあるタイトルだし表紙絵もかっこいいし、実に素晴らしいパッケージリングだと思います。

 

が、これ前作がある訳でして。前作の表紙の明るい感じと言うかコミカルな感じを引っ張ってしまってる私もいる訳でして。急にハードボイルドを前面に出されても今一つ乗り切れないんですよ。だってマフィアのボスの右手が泡だて器だったりするんだぜ?リアルな赤ん坊のおもちゃだったりするんだぜ?どこか作風としても乗り切れない設定が多々あるんだよなぁ。

ってこれ作者の癖なのかもしれません。私の大好きな「浜村渚の計算ノート」シリーズもそうなのよね。一見ホワホワした世界観なのにテロリストが平気で人を殺してるのよ。主人公の生い立ちもかなり悲惨なんだけどあまりあくまで軽く物語を進ませていくと言うか。なんか軸がしっかり固定されてないような、敢えて中途半端なところに軸を置いているのか。

そう考えると「家庭教師は知っている」は振り切ってて良かったなぁ。

 

ちなみにこのシリーズ、ミステリーではあるのですが、出てくる玩具が特殊で今一つ脳内で上手く想像できないんですよ。なのであれこれと結末を想像しながら読む楽しみ方では無く、だただた物語を受け止める楽しみ方だったりします。これはこれで面白かったりするのよね。

ヒロインの父親を捜すというストーリーが途中のままなので、まだこのシリーズは終わってない筈だと祈りつつ、次巻の発売を待っております。