鹿沼の隅っちょから

鹿沼の隅っちょから

「鹿沼」でググった時に1ページ目に表示される事を目指していたのに鹿沼の事全然書いてません

聖の青春 大崎善生

最初に言っておきます。

泣けると聞いて購入しました。帯にも泣けると書いてありました。私の中でハードルが高くなり過ぎたようです。全然全くこれっぽっちも泣けませんでした。ああ、普通に読みたかったわ。

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重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖(さとし)。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。

私は村山聖なる人物を知ってます。棋士であること、強かったこと、そして若くして亡くなっていること。

漫画「3月のライオン」にモデルになったキャラがいることも知ってます。彼が後に亡くなる事を知ってるが故に読んでいて涙腺を刺激されたこともあります。

メールマガジンなる存在が大嫌いな私ですが、縁あって創元社メールマガジンは毎回楽しみにしていたりします。そのコラムの中にこの作品が出てきて興味を持ったのがきっかけでした。

ネットで購入するのに評価が目に入ってくるのですが、それが「泣ける」のオンパレード。購入したら帯にも「近年でダントツに泣けました」。そりゃあ期待も高まるってもんですわ。最近歳を取って涙腺も弱体化してるしね。

 

で、泣けなかった私がおります。

ノンフィクション作品として最高でした。いろんな人に取材したことも、その人たちが村山青年を好きだったことも、何より作者が大好きだったことも。ちゃんと時系列に沿って物語として進行し、その時その時の感情や周囲の反応等々、実に細やかに描かれており、私は村山聖なる人物を身近に感じることが出来ました。

が、泣けなかった。

泣きたいから購入した訳じゃないのに、気が付いたら目的が泣けることになっていたのかもしれません。それは誰が悪いのか?俺です。俺のせいです。自分のせいです。

 

流されやすい自分を殴りたい。ちゃんと普通に一つの作品として真正面から読めばよかったのに、「泣く」って理由で読んでちゃ駄目だよねー。

それでも私に突き刺さった作品ではあります。限りある命を燃やし続けた彼に影響を受けたのは間違いありません。私はまだ40代です。まだまだ老後を考える年齢ではありません。しかし、いつ命が潰えるか分からない年齢でもあります。ちゃんとそれを意識した上で生きていこう、なるべく後悔の無い生き方をしよう、そう考えたのは間違いなくこの作品のお陰だったりします。

 

なんだかんだ仕事中心に考えていた生き方を変えました。職場で馬鹿にされようが給料が減ろうが、健康を第一に、ストレスをあまり感じることなく、自分の能力に合った仕事をしていこう、そう決めました。自分のプライドを守るためだけに、家族や健康や時間や様々な物を犠牲にしていたことに気が付かされたんです。今までの俺の人生って何だろう、ツマンネープライドの為だけに生きてきたんじゃね?って。

泣けなかったけど、私にとって有意義な一冊になりました。