ある日。
離島へ赴き好みの住民を探していたら、見覚えのあるシルエットがそこにおりました。
似てる。
私が好きだったあの方に似てる。引っ越しを考えていた彼女を引き留めなかったけれども、それでもいつかまた会えると信じていた彼女に。
いや、違うだろう。そんな筈はない。どうぶつは100人近くいる訳で、お別れした住民にまた会えるなんて、そんな奇跡は早々起こるものじゃない。
近づいて見たら、どう見てもあの姿は私が大好きだったアップルさんでした。アップルさんに間違いない。アップルさんであって欲しい。恐る恐る声を掛けました。
「はじめまして」
違う、はじめましてじゃないよアップルさん。俺らは同じ島に住んでたじゃないですか。
センスのない島の名前も、私の名前を憶えてませんでした。
仲良かった記憶もありませんでした。
いやだから、気ままに同じ島に住んでたじゃないですか。
引っ越した先は気持ちをリセットするぐらいストレスを感じているのでしょうか。
このアップルさんは私の知ってるアップルさんではありませんでした。同じ島に住んでたあのアップルさんではありません。ですので、どうしても島に誘うことが出来ませんでした。
アイドル目指してたのかアップルさん。俺知らなかったよ。って俺の知ってるアップルさんも同じようにアイドル目指してたのか知らないんだけどね、知らなかったんだけどね、そこまで会話してなかったのかな。
私の知ってる、そして私を知ってるアップルさんはいなくなりました。渡し損ねた竹の笛は、渡し損ねたままになりました。