私が大好きな作家の一人である佐藤賢一さんの作品です。好きなのにまだ読めてない作品がございます。その内の一つ、『ラ・ミッション』をやっと読むことが出来ました。
幕府の軍事顧問だったフランス軍人ブリュネは、日本人の士道=エスプリに感じ入り、母国の方針に反旗を翻して戊辰戦争に身を投じる。
あらすじ短いけど、大体あってる。
戦うこともなく降伏していく幕府の不甲斐なさに憤りを感じ、最後まで抗うと決めた男達に、母国フランスの方針に反してまでフランス人にも拘わらずその戦いに参加してした男の物語です。熱い。こういうお話大好きです。
大好きなのですが。
佐藤賢一の作品をある程度読んでいる私からすると、何があったの?と驚くぐらい醜い部分が無くて驚きました。女という女がとんでもなく酷い目にあうことに定評がある佐藤賢一の作品(あくまで個人の感想です)とは思えないぐらいの綺麗さです。そもそも主要キャラの女が一人しか出てこないということさえ驚きです。
人間の醜さも殆どございませんでした。一人いるのはいるのですが、いつも出てくる醜い人間はこんなもんじゃなかったしね。そもそもそのキャラも別に悪人では無かったし。
よく考えたら酷い目にあう男もいない有様。どうしたのでしょうか、佐藤賢一。拷問の一つも無かったし。
物語としても、史実通りだから仕方が無いのですが、ほぼ全て負け戦です。そして小規模です。主人公のブリュネさん、よく考えたら戦場に殆ど出てません。訓練や砦の作り方で活躍したかもしれませんが、物語の主人公としての派手は活躍はほぼありません。
派手さが無いというより、何もしてない印象です。ただ参戦しただけ。
結論として。
物語的にも佐藤賢一作品的にも、今一つな印象となってしまいました。
それでも、史実に基づいた物語は興味深かったです。ラストの展開は驚きでした。あと明治維新の頃のフランスがナポレオン3世時代だったってことも驚きでした。世界史好きな私ですが全く認識しておりませんでした。だってナポレオン3世時代ってあまりインパクトなかったし(あったかも)。私自身があまり興味を持てなかったってのもあるんですけどね。
また、これまた私自身のことで申し訳ないのですが、維新ものは今まで避けておりました。なぜなら、嵌まったらやばそうだから、というおバカさんに理由なんですけどね。
なので、実は私、あまり知識がございません。だからこそ、史実に基づいた部分は面白かったんです。土方が函館で最後を迎えたぐらいしか知りませんでした。
つか佐藤賢一、土方好きすぎだろ。そんな描写したら俺も好きになっちゃうわ。
佐藤賢一が好きな人にはおすすめしませんが、一般的な方には心置きなくおすすめ出来る作品でした。
私が望んでいる癖の強い佐藤賢一作品では無かったのですけどね。