鹿沼の隅っちょから

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「鹿沼」でググった時に1ページ目に表示される事を目指していたのに鹿沼の事全然書いてません

トランスヒューマンガンマ線バースト童話集 三方行成

我が子がAMAZONプライムでオリジナル番組「戦闘車2」を見たいと言うので仕方なく登録した時に目に入ったのがこのタイトルでした。

『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』

何このパワーワード。気が付いたらヨドバシで注文してました。

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www.hayakawa-online.co.jp

トランスヒューマンガンマ線バースト童話集

トランスヒューマンガンマ線バースト童話集

 

 はるか未来、あるところにシンデレラという人類の進化形・トランスヒューマンの少女がおりました。〈魔女〉から拡張現実ドレスを与えられた彼女はカボチャ型飛行体に乗り、お城の舞踏会へ向かいます。しかしその夜、空から宇宙最強の爆発・ガンマ線バーストの閃光が降り注ぎ――「地球灰かぶり姫」ほか「竹取戦記」「スノーホワイト/ホワイトアウト」など、古典に最新の想像力を配合した童話改変SF全6篇を収録。超個性派による第6回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作!

 

SF詳しくないから、まずトランスヒューマンがわかんない。

トランスヒューマニズム - Wikipedia

トランスヒューマニズムでは新しい科学技術、たとえばNBICと呼ばれるナノテクノロジーバイオテクノロジー情報技術認知科学、また未来技術として考えられている仮想現実人工知能精神転送人体冷凍保存などを支持しており、この考え方に則り、実際に薬品遺伝子操作による寿命の延長・肉体の強化、脳とコンピュータの接続、などの研究が行われている

この説明と、本を読んだ私なりの解釈としては、作り物の物体に精神転送したのがトランスヒューマン、なのかなと。

精神転送って出来るの?脳をそのまま移植するんじゃないのね。データ化して転送するのか。すげぇ発想。

こんな団体もあるようです。

twitter.com

定義が広いな、そしてもうそこに来てるんだな。

 

んで次にガンマ線バーストがわかんない。

ガンマ線バースト - Wikipedia

超大質量の恒星が一生を終える時に極超新星となって爆発し、これによってブラックホールが形成され、バーストが起こるとされる。多くのガンマ線バーストは何十億光年も離れた場所で生じている事実は、この現象が極めてエネルギーが高く(太陽が100億年間で放出するエネルギーを上回る)、かつめったに起こらない現象である事を示唆している(1つの銀河で数百万年に一度しか発生しない)。

本を読んだ私の解釈は、大きな星が崩壊したことで発生したガンマ線バーストが地球に降り注ぐと壊滅的なダメージを受けるけど海中や地中は免れられる、って感じです。

でもこの衝撃破って光よりも遅いんだよね。感知してから地球に届くまでどのぐらいの年月が掛かるんだろうか。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b6/Gammarayburst-GRB990123.jpeg/1920px-Gammarayburst-GRB990123.jpeg

 

この「トランスヒューマン」と「ガンマ線バースト」が合わさった後に「童話集」だからね。今まで生きてきてここまでインパクトのあるタイトルを喰らったこと無かったんですよ!そりゃ買うよ。そして読むよ。

そして読んだ感想としては、非常に楽しめました。SF詳しくない私ですが本当に面白かったよ!

帯にも書いてありますが、SF童話全6編とあるとおり、6つの短編で成り立っております。そのすべての物語が基本的にトランスヒューマンでガンマ線バーストです、って意味わかんないとは思いますが、大体合ってます。

 

「地球灰かぶり姫」

元ネタの童話は「シンデレラ」です。基本的には皆が知ってるその物語に沿ってる筈なのに、私は途中で一体内を読んでいるのだろうか?と不思議な感覚に陥りました。

知ってる話なのに、そこに描かれているものは私が全く知らない世界なんです。

だって始まって6行目に「女の子は自分の体を持ってました。」って書いてあるんだぜ?これで完全にこの世界観に没入いたしました。

ある程度話が進んでいくと、地球にガンマ線バーストが襲い掛かります。

 

「竹取戦記」

元ネタの童話は「竹取物語」です。かぐや姫が出てきますが、すげぇ戦闘的です。というかおじいさんがすげぇかっこいいです。あれ?おばあさんが居ない。

読んでいて最後まで私には竹の存在が分かりませんでしたが、別に問題ありませんでした。

読んでいて一番楽しかったです。

ある程度話が進んでいくと、地球にガンマ線バーストが襲い掛かります。

 

スノーホワイト/ホワイトアウト

元ネタの童話は「白雪姫」です。英語でスノーホワイトって言うんですね、知りませんでした。

でも主人公は魔女だったりします。

結構えぐい話でしたね。意外とそう遠くない未来な気がしました。私もここの住人になりたい。

ある程度話が進んでいくと、地球にガンマ線バーストが襲い掛かります。

 

「<サルベージャ>VS甲殻機動隊

どう考えても攻殻機動隊ですね。そもそもトランスヒューマンが義体だもんな。

カニとかテナガエビとか出てきますが、脳内で全くビジュアル化できなくて困りました。

ある程度話が進んでいくと、地球にガンマ線バーストが襲い掛からないや、その後の話だったわ。

帯を見たら薄く「さるかに合戦」と書いてありました。あ、蜂!そうか!今更気が付いた私は読解力が無いんだなと再確認いたしました。

 

「モンティ・ホールころりん」

元ネタの童話は「おむすびころりん」、なのか?おむすびがルンバなんだぜ?

舞台がオールトの雲、って何それ?

オールトの雲 - Wikipedia

オールトの雲(オールトのくも)あるいはオールト雲(オールトうん)とは、太陽系を球殻状に取り巻いていると考えられる仮想的な天体群をいう。

SF界隈ではよく出てくる単語なのでしょうか。私は初めて知りました。

モンティーホール問題は数学の話です。私は「浜村渚の計算ノート」シリーズで知ってましたが。

モンティ・ホール問題 - Wikipedia

「プレーヤーの前に閉まった3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。プレーヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレーヤーが1つのドアを選択した後、司会のモンティが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。

ここでプレーヤーは、最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われる。プレーヤーはドアを変更すべきだろうか?」

これを量子コンピューターなんかとは比べ物にならない代物で演算させるんです。

重力の特異点 - Wikipedia

重力の特異点じゅうりょくのとくいてん、gravitational singularity)は、概略的には「重力場が無限大となるような場所」のことである。

やべぇ、全然わかんねぇ!脳が理解できてない!

でも私には一番刺激的な話でした。

ガンバ線バーストが降りかかった相当後のお話です。

 

「アリとキリギリス」

元ネタは、ってタイトルそのまんまだったわ。そしてお話も、実はそのままだったりします。

表紙の同じ女の子が3人描かれてるのってアリだったのね、と今気が付きました。

本の最後にコンテストの選評として審査員のコメントが書いてあるのですが、神林さんが「話をまとめようとしたあたりでこの作者の力量の限界を感じた」みたいなことを書いてました。私は全くそんな印象ありませんでしたけどね。この「アリとキリギリス」こそ、本作の軸であり、私はこの作者の力量を感じたお話でした。まあ、ただの素人のおっさんが褒めたところで嬉しくないだろうし、SF作家の神的存在であるお方がおっしゃってるんだから圧倒的に正しいんでしょうけどね。

とにもかくにも、このお話こそこの作品の集大成であり軸であり肝です。歌はいいね、って言ってるカヲル君が脳内にポップしました。文明の極みがトランスヒューマンならば、文化の極みは歌なんですよ、たぶん。

 

SFに詳しくない、あまり触れたことが無いからこそ、私は楽しめたのかもしれません。

逆に言えば、そういう一般的な読者でも楽しめる作品です。

タイトルに惹かれた方、表紙の色遣いに惹かれた方、SFに興味がある方は是非読んでみてください。私は非常に楽しめた作品でした。