鹿沼の隅っちょから

鹿沼の隅っちょから

「鹿沼」でググった時に1ページ目に表示される事を目指していたのに鹿沼の事全然書いてません

朧月市役所妖怪課 河童コロッケ 青柳碧人

私の大好きな作家である青柳碧人さんの妖怪もの。代表作『浜村渚の計算ノート』シリーズのお陰で理数系のイメージがあったのですがまさかの妖怪もの。はてどんな感じなんだろうかと読んでみました。本当に妖怪が出てくるにもかかわらずちゃんとしたミステリーでした。

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前代未聞の地域活性、妖怪お仕事小説!
希望を胸に自治体アシスタントとなった宵原秀也は、赴任先の朧月市役所で、怪しい部署に配属となった。妖怪課――町に跋扈する妖怪と市民とのトラブル処理が仕事らしいが!? 汗と涙の青春妖怪お仕事エンタ、開幕!

朧月市役所妖怪課 河童コロッケ (角川文庫)
 

舞台がG県朧月市という架空の自治体なのですが、G県と言われるともう群馬県しか思い浮かばないし、そうなると旧月夜野町を想像します。読んだ感じもっと人口が多そうなので違うと思いますが。関係ないけど月夜野町って美しい名前だなぁと思ってたので消滅したのが残念でなりません。

 

妖怪が出てくるお話なのですが、名前を見ても知らない妖怪ばかりで大分マニアックな妖怪を引っ張ってきたんだなぁと思ったら青柳さんオリジナルだったようでして。そりゃ知らないわ!逆にそこまで設定を考えてたの?と驚きました。

というのも、自治体アシスタントなる制度や、日本中の妖怪をその自治体に集めたってことや、その妖怪を封印するって条例や、朧月市から出ると記憶が無くなるってこと等々、かなり設定を考え抜いた上で物語が転がっていくのが分かるんです。今まで数多く青柳さんの作品を読んでますが、ここまで設定に凝ったシリーズは無いのではないでしょうか。

凝った設定の上に公務員と妖怪を前面に出しつつも本質はミステリーなんです。なんとまぁ珍しい取り合わせだこと。こういう挑戦的な姿勢、大好きです。

 

個人的には、地方公務員の在り方に共感を持ちました。冒頭に出てくるこの台詞がずっと脳裏にこびりついて離れません。

「地方公務員というのは、住民に率先して夢を見る仕事だ」

「公務員が夢を見ない自治体に、住民を幸せにすることはできない」

最初読んだ時には今一つピンと来なかったのですが、読み終わった今は分かります。公務員って安定した職業ってイメージしか無かった自分を殴りたいです。なんて素晴らしい職業なのでしょうか。

今更ですが考えを改めました。というか今まですみませんでした。

 

内容としても事件が進むうちに主人公の謎が明らかになりつつ、さらなる展開へ続いていき、先を知りたい早く読みたいと思わせる構成。お陰で読んだ後すぐに続きである『朧月市役所妖怪課 号泣箱娘』を買っちゃいましたよ。

妖怪課の面子の掘り下げもまだ足りないし、終盤に出てきたライバルもまだ顔出し程度だし、青柳さんやっぱりすげぇわ、と次巻が楽しみでワクワクしております。