鹿沼の隅っちょから

鹿沼の隅っちょから

「鹿沼」でググった時に1ページ目に表示される事を目指していたのに鹿沼の事全然書いてません

ハンニバル戦争 佐藤賢一

私の大好きな作家である佐藤賢一の作品。しかも大好物である古代ローマ時代でさらにハンニバルですよハンニバル!面白くないわけがないじゃないですか!しかも私の想像を上回る描き方にさらに興奮いたしました。

やっぱり佐藤賢一は素晴らしい!

f:id:toriid:20190710225037j:plain

時は紀元前三世紀。広大な版図を誇ったローマ帝国の歴史の中で、史上最大の敵とされた男がいた。古代地中海を舞台とした壮大な物語が、今、幕を開ける!

ハンニバル戦争 (中公文庫)

ハンニバル戦争 (中公文庫)

 

タイトルはハンニバル戦争ですが、世界史では「第二次ポエニ戦争」と教わります。

第二次ポエニ戦争 - Wikipedia

第二次ポエニ戦争(だいにじポエニせんそう、Secundum Bellum Punicum)は、共和制ローマカルタゴとの間で紀元前219年から紀元前201年にかけて戦われた戦争。ローマ、カルタゴ間の戦争はカルタゴの住民であるフェニキア人のローマ側の呼称からポエニ戦争と総称されるが、この戦争は全3回のポエニ戦争の2回目にあたる。

またこの戦争において、カルタゴ側の将軍ハンニバル・バルカはイタリア半島の大部分を侵略し、多大な損害と恐怖をローマ側に残したため、この戦争はハンニバル戦争とも称される。

あ、ハンニバル戦争とも言うのね、知らなかったわ。

 

世界史に詳しくない人はハンニバルと聞くとレスター教授を思い出すかもしれません。ってなんで「羊たちの沈黙」の続編が「ハンニバル」なんだろうかと調べたら、レスター教授のファーストネームハンニバルでした。

ってハンニバルって名前を付ける親がキリスト教圏にいるのかなぁ。どうなんだろう。

ハンニバル。実際の彼はとんでもない人物なんです。

ハンニバル - Wikipedia

第二次ポエニ戦争を開始した人物とされており、連戦連勝を重ねた戦歴から、カルタゴが滅びた後もローマ史上最強の敵として後世まで語り伝えられていた。2000年以上経た現在でも、その戦術は研究対象として各国の軍隊組織から参考にされるなど、戦術家としての評価は非常に高い。

2000年経った今でも研究されてるぐらいの戦術家なのですが、私としては冬のアルプス越えを決行した戦略家としてもずば抜けた才能を持った人物だと思っております。

ただ、10年近くもイタリアに居座ったものの、最後までローマを落とせなかったのが失策だったと思っております。本国カルタゴの不甲斐なさなのか、ハンニバルの根回しが足りなかったのか。

なによりカンナエの戦いです。この戦いは今でも研究されているぐらい、素晴らしく凄まじく悍ましいものなんです。

カンナエの戦い - Wikipedia

ローマ軍8万に対してハンニバル率いるカルタゴ軍5万です。なのに、少数のカルタゴ軍がローマ軍を包囲して壊滅させてしまうんです。ローマ軍8万人中6万人の死傷者と1万人の捕虜に対し、カルタゴ軍は6千人です。ここまで人数的に不利な状況下において圧倒的な勝利は世界史上類を見ません。

この戦い、世界史でも教わったし塩野七生ローマ人の物語」でも解説されていたのですが、今一つ理解できてませんでした。包囲するのは分かるのですが、人数が多い方を少ない方が包囲する、ってのがどうにも納得できなかったんです。ヌミディア騎兵の重要性も書いてあったのですが。どうにもしっくり来なかったんです。

 

ところが、この作品ではあっけなくすんなりと理解できてしまいました。そしてこの戦術の恐ろしさを知りました。

階段状の布陣、両翼からの圧迫、ヌミディア騎兵の機動力を生かした敵後方からの攻撃。対してローマ軍は前から左右から押し上げられて、剣を振るうこともできないぐらい密集状態に陥り、身動きも出来ないまま敵の前に出ざるを得ないことになってしまう。前面への中央突破も出来ず、左右へ逃げることも出来ず、後ろへ引こうにもヌミディア騎兵がいる。

ラッシュアワーの中央線通勤快速よりも酷い密集状態を思い浮かべました。あんな中で盾とか剣とか振るえないわ。そしてそんな状態で敵と戦う?無理無理。

後方を突かれたローマ軍はパニック状態に陥って極度に密集したため、中央の兵は圧死する者まで現れた。前方をガリア歩兵、両側面をカルタゴ歩兵、後方をカルタゴ騎兵によって完全包囲下に置かれたローマ軍は、逃げることも中央突破もできずに殲滅されることとなった。

 

こんな軍神であるハンニバル佐藤賢一はどう描いているのか。それに対して最終的にザマの戦いでこの包囲戦をやり返して勝利したスキピオはどんな人物として描かれているのか。

是非読んで確かめてみてください。私は佐藤賢一らしい描き方でニヤニヤしてしまいました。ハンニバルをこんな風に捉えた人って中々いないと思うのですがどうでしょうか。

ローマ人がもっとも恐れた人物であるハンニバル。それに対抗した若きローマ人スキピオハンニバル戦争とのタイトルですが、主人公はスキピオです。彼から見た、ローマ人から見たハンニバルへの恐怖を是非堪能してください。

昔からの佐藤賢一ファンといたしましては、性描写といいますか歪んだ女性への偏見が殆どなくて少々がっかりしました。スキピオの奥さんが金遣い荒いぐらいしかなかったのよねぇ。

 

ちなみに、ローマ人は最終的にカルタゴを徹底的に滅ぼします。カルタゴ人を虐殺し都市を破壊したあげくに塩まで巻いて不毛の地にします。何もそこまでやらなくてもと思うのですが、それだけローマ人はハンニバルが、カルタゴが恐ろしかったのでしょうね。

カルタゴ - Wikipedia

第三次ポエニ戦争カルタゴの戦いによって、カルタゴは滅亡し、ローマの政治家・軍人であるスキピオ・アエミリアヌスの指示のもと、度重なるカルタゴによる侵略への報復として、市民は徹底して虐殺され都市は完全に破壊された。このカルタゴ陥落の際にスキピオカルタゴの運命を自国ローマの未来に重ね見たといわれている。再三災いをもたらしたカルタゴが再び復活することがないように、カルタゴ人は虐殺されるか奴隷にされ、港は焼かれ町は破壊された。陥落時にローマが虐殺した市民は15万人に上り、捕虜とした者も5万人にも上ったとされる。カルタゴの土地には雑草一本すら生えることを許さないという意味で塩がまかれたという。