どのタイミングなのか覚えていないだけれども、AMAZONかヨドバシで見かけて、「ゲームSF傑作選」なるワードと桜坂洋さんの名前で購入を決めました。なんだかんだ実際に購入するまで時間が掛かったし、読み始めたのも時間が掛かったのだけれども。
「ビデオゲーム」×「小説」の可能性に挑む!
って帯の文言ですが、私は桜坂洋「All You Need Is Kill」を読んだときに「ゲームのルールを落とし込んだ物語って面白いな!」と感動したと同時に、もっとこういう類のものが世に出てくると思っておりました。
私はあまり出て来ないイメージだったのですが、なんてことはない、私の思っていた形ではない作品が世に溢れておりました。
ライトノベルで流行している異世界モノは間違いなくこの路線なんですよね。
しかし、私が望んでいたものとは違うんですよ。んじゃあどういうやつなんだよ、と聞かれたら、私はこの本を差し出します。
この本の中に、私が望んでいたゲームのルールを落とし込んだ物語がたくさんございます。
「リスポーン」桜坂洋
もうタイトルだけでゲームを嗜む紳士なら「ほほう」と顎髭を摩るレベルです。
この設定を現実世界に落とし込んだら面白そうだな、って分かるもの。
最初に持ってくるだけあって中々面白い作品でした。最後が不満ですが。
牛丼屋でバイトしてる主人公が殺されるところから始まります。
「救援よろ」デヴィッド・バー・カートリー
そのタイトルはどうなんだろうか、と翻訳者を小一時間ほど問い詰めたい。こういう小ネタを知ってる人しか読んでないだろうと思ったのだろうか。だったら大丈夫、問題ない。大体合ってる。
私の中では一番ゲームしてる物語だと感じました。ちょっと設定が強引だけどね。
ゲーム世界に引きこもってる彼からのメールから始まる不思議な世界観のお話です。
「1アップ」チャールズ・ユウ
完璧なミステリー。短編では勿体ないと感じたぐらいの傑作、もしかすると短編だから素晴らしいと感じた可能性もあるけれども。
設定やら登場人物やら舞台設定やら本当に最高。この1篇だけでもこの本を購入した意味がありました。
ネットゲーム上の友人の葬式から始まるミステリー。
と、最初の3篇だけでも読む価値があります。本当に面白い。
設定は勿論ですが、翻訳者のスキルが高いのが要因の一つだと思っております。海外の作品を読んでも今一つ脳に入ってこないのは、日本語には無い言い回しとか馴染まない風景描写とか知らない固有名詞とか、とにかく翻訳者の力量というか相性が重要だったりします。この作品はそこらへんのストレスが全くございませんでした。
逆に、翻訳は素晴らしいのでしょうが、物語的にも意味が分かりかねる作品もございました。
何より、ラストの締め方が雑な作品が多々あり、正直そこはガッカリしました。なんだよこの投げっぱなしジャーマンは!みたいな。
総合的には大満足な1冊でしたけどね。
ゲーム好き、SF好き、もしかするとミステリー好きにもオススメ出来るかもしれません。
もう一押し欲しいと感じた方は、こちらのリンク先を読みましょう。
一度読んだ私でももう一回読もうかなと思わせるぐらい、ネタバレなしの素晴らしい解説が書いてありますので。