「傭兵ピエール」を読んでファンになった佐藤賢一さんの新刊です。物語だろうが解説だろうが相変わらず残酷で理不尽で溜まりません、ってこの方のせいじゃなくて時代がそうなだけなんですけどね。
中二病の琴線にビンビン触れまくる「テンプル騎士団」、白マントに赤十字とか完全に私たちのハートをダイレクトアタックです。
そんな一部界隈では物凄い知名度のテンプル騎士団ですが、実際の騎士団はどの時代にどんな活動をしてどんな存在だったのか全く知らないことに気が付きました。佐藤賢一さんのこの本のタイトルを見たときに。
知らない状態の私の「テンプル騎士団」のイメージは、とにかく宗教的で「最強」である、って感じです。騎士ってだけでも強そうなのに、宗教的側面も兼ね備えてる訳で、死を厭わない行動をするからさらに強い、って思ってました。
そして、この本を読んで分かりました。そんなレベルじゃなかったことに。
帯に書いてある文章がすべてを表しております。
「軍事、経済、政治、すべてを掌握した最強の組織。」
一個人が強いのは勿論、組織としても最強なんです。その理由は是非本を読んで知って下さい。その理由に納得するどころか、思ってる以上に最強だと感じること請け合いです。
そして、こんな組織を野放しにする訳がございません。
この本の冒頭、パリの本拠地がここら辺にあったんですよぉ、と軽い説明の後、テンプル騎士団がいきなり窮地に追い込まれている描写から入ります。驚きです。
そして顛末を描く前に中断して、テンプル騎士団の成り立ちから説明が始まります。
物語じゃないのにいきなり引き込まれるこの構図、うまいなぁ。
そして冒頭から拷問があります、さすが佐藤賢一。
12世紀といえばまだ国の概念のままならない状態で、すでに国の枠を超えた存在だった「テンプル騎士団」。今の時代に置き換えたとき、思い浮かんだのがSFの世界でよくある「世界を牛耳る超巨大企業」です。圧倒的な資金力で国さえも従わせ、傭兵を雇って軍事力さえ保持する組織。世界各地に支店を置き、すべてのサービスを代行すると同時に情報さえも把握し操作し世界をコントロールする大企業。
あ、なんか書いていて大体合ってる気がしてきた。
さらに宗教がバックにいるんだからね、そりゃあ凄いわ、テンプル騎士団。
最強にして最凶にして最恐な組織である「テンプル騎士団」。
興味を持たれた方は是非一読を。
そして、読んで面白いと感じた方は是非佐藤賢一さんの作品を読んでみてください。彼の作品はすべからく面白いです、そして酷いです、残虐です、理不尽です、最高です。
まずは「傭兵ピエール」から読んだ方がいいかなぁ、ジャンヌ・ダルクが酷い目に合ってるけど。もしくは「赤目のジャック」かなぁ、貴族様が酷い目に合ってるけど。